今回は「ワールドタイム」という機構についてご紹介します。
ワールドタイムとは
ワールドタイムとは、「1つの腕時計で世界の24地域の時間」を知ることができる機能です。
時針と分針で現在地の時刻を表現しています。
さらに、24時間で文字盤を1周する「24時間表示ディスク」と「都市名ディスク」を文字盤に備えており、世界の24タイムゾーンにある主要都市の時刻が一目でわかるようになっています。
下のイメージ画像では、「現地時間(TOKYO)は時分針から10:08、HAWAIの時間はディスクから15:08(時間はディスクから、分は分針から判断します)と読み取ることができます。
世界の24タイムゾーンとは
1840年代、当時の人々にとって、時間とは太陽の位置によってきまるものであり、東西に移動すると時刻も変わるのが当然でした。
しかし、鉄道の急速な発展によって、ローカルタイム(地域ごとの独自の時間)の不便さが目立つようになりました。
蒸気機関車の運行ダイヤの作成には、都市とごとに時刻が異なっていると困ってしまいます。
そこで、イギリスでは世界に先駆けて国内の時刻を統一した「標準時」が制定されました。
また、国土が広大なアメリカでは「国内をいくつかのタイムゾーンに分割し、隣接する地域同士の時差を1時間とする」という考えが採択されました。
その後、カナダの鉄道技師サンドフォード・フレミングによる貢献によって、このアメリカ標準時のシステムが世界標準になっていきます。
欧州旅行に出かけたフレミングは、鉄道時刻表の列車到着時刻のミスプリントで列車に乗り遅れてしまいます。
この失敗は鉄道技師であるフレミングにとっては、許しがたいものでした。
そこで、解決策として世界的な標準時の制定を唱えました。
フレミングの考えは以下の4つから成っていました。
- 基準となる子午(本初子午線)を決め、その時刻を世界標準時とする
- 地球を24のタイムゾーンに分け、各ゾーンの時差を1時間とする
- 1日を午前と午後にわける12時間制を廃止し、24時間制とする
- 本初子午線の0時を始まりとする「世界日」を導入する
1884年10月1日にワシントンで開かれた「国際子午線会議」にて、当時のアメリカ大統領チェスター・A・アーサーの呼びかけで、議論が重ねられました。
その結果、イギリスのグリニッジを通過する子午線を本初子午線とし、世界を24のタイムゾーンに分け、その時差を1時間とすることが決められました。
ワールドタイムの誕生
1937年にワールドタイムを搭載した世界初の腕時計がパテックフィリップによって製造されました。
ワールドタイムという機構を開発したのは、ルイ・コティエという時計師です。
この時に製造された時計Ref.515HUは、世界28の都市の名前が文字盤に記されていました。
今の「都市名ディスク」とは違い、都市名が固定されていたため、グリニッジ標準時を基準にした時刻しか知ることができませんでした。
そこから開発が進められ、Ref.542HUが誕生します。
回転ベゼルに都市名が刻印され、時差のある地域をまたいで移動する際、滞在する都市(もしくは同じタイムゾーンの都市)をベゼルから探し、12時位置に合わせることで、24のタイムゾーンに分けられたどの地域ともシンクロし、ホームタイムとローカルタイムを知ることができました。
さらに1948年。9時位置のセカンドリューズでケース内に設置された都市名記載の回転リングを設定が可能なメカニズムを開発、特許を申請しました。
そこからさらに開発が進み、今のワールドタイムRef.5330Gへとつながっています。
ぜひ、パテックフィリップの公式HPで、詳細をご覧ください。
さいごに
今回は、ワールドタイム機能についてご紹介しました。
鉄道の発達によって、人間の行動範囲が増えたこと。
それによって、人間にとって時間という概念がより重要になったこと。
こういった歴史的な動きを知ることができるのも時計の魅力だと感じました。
おもしろい!
時計としても、世界中の時間を知ることができるなんて、とっても魅力的だと思います。
唯一の欠点は、文字盤の情報量が多すぎで、少し見づらいことかもしれません … 笑
ワールドタイム。
いつか手にしてみたいです!
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